杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(26) 農から産業振興を 補助待ちから脱皮を

2019/03/11 22:53

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 これまでのコラムで、さまざまな対策を取り上げてきましたが、誰が農から始まる産業振興を推進していくべきなのでしょう。

 もちろん、震災や原発事故で大きなダメージを受け、まだ、以前のレベルに戻っていない以上、引き続き国や市町村からの支援は不可欠でしょう。福島県の場合、農業就業人口が減少しているにもかかわらず、従来より農業には重点的な政策が組まれており、県として農業が一つの基幹産業であるという意識を持っていることは明らかです。

 しかし、反面、国も含めた農業政策は大きく転換してきているものの、いまだ、補助金色が強いものが多いことも事実です。全国のJAに伺っても、多くのJAで「どうすれば補助金で...」「いくらもらえるから」という会話がよく出てきます。読者の皆さんも最近、田んぼで大豆が栽培されているのを見たことがありませんか。あれがまさに転作補助。大豆を植えることで補助金がもらえる典型的な事例なのです。確かにコメの消費量が落ちているのは分かるので、転作は必要なのですが、収穫できた大豆は、まだとても海外産には価格面で折り合わず、行き場を失っていると聞き、なんとももったいない話です。

 はるかかなたのポーランドで開催された地球温暖化を議論しているCOP24で、四十年後に食糧増産を70%増加させなくちゃいけないという発表がどんどんされている中、一体われわれは何をしているんでしょう。収穫できたものをきちんと生かし、収入を確保し、コミュニティーの環境保全も併せて行える新しいタイプの産業としての農業が必要です。また、それをサポートする六次化構築を補助金待ちでなく、地域で工程表を作って進めていかないと急な改革ができない農業の世界では、いずれ確実に来る危機的状況に間に合わなくなってしまいます。

 そんな中、震災、原発事故、それに伴う風評被害を受け、福島の農業はこの数年、どう生き残るかという部分に重点が置かれてきたように思います。その中で、各地域を伺うと粘り強く頑張って、事業を拡大しようと模索している個々人や集団が出てきています。

 復活へ向けての素地は確実にできてきました。さあ、このポテンシャルをどう生かして、点と線を結び付け、新たなシナジー(相乗効果)をどう作っていくのか...。次回以降は、いよいよそれぞれが何をして、農から始まる産業振興を進めていくのかについてまとめていきたいと思います。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)