「一括認定」突破口に 全域避難の町、思い切実【復興を問う 帰還困難の地】(30)

2020/09/26 07:43

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双葉地方町村会の要望で復興庁を訪れ、田中和徳復興相(当時、右)に帰還困難区域の避難指示解除に向けた方針の明示を求める伊沢町長=8月25日
双葉地方町村会の要望で復興庁を訪れ、田中和徳復興相(当時、右)に帰還困難区域の避難指示解除に向けた方針の明示を求める伊沢町長=8月25日

 双葉町の伊沢史朗町長(62)は八月上旬、東京・霞が関で復興庁の幹部職員と向き合った。東京電力福島第一原発事故に伴う町内の帰還困難区域の全域を一括で特定復興再生拠点区域(復興拠点)に認定するよう迫った。「避難先で亡くなった町民は六百人を超えた。段階的に避難指示解除を決めるやり方は、町民の思いにそぐわない」。国に本音をぶつけたが、幹部職員は何も答えなかった。

 拠点外の避難指示解除に向けた方針を示すよう、国に要望を繰り返している。だが、明確な回答は得られていない。

 苦い思い出がある。二〇一七(平成二十九)年九月に町面積の約一割に当たる約五百五十五ヘクタールが復興拠点になると決まった。当時、拠点から外れた白地(しろじ)地区の住民から「なぜうちは入らないのか」と尋ねられた。切実な問い掛けに返す言葉がなく、胸を締め付けられた。

 「住民は町が頑張ってエリアを広げてくれると信じ、何とか我慢してくれている」。避難指示の解除が進まなければ、住民の苦しみは、いつになっても拭えない。

    ◇  ◇

 白地地区では原発事故の発生から十年目となった今も、除染や建物解体は手付かずの状態だ。家の中にイノシシやハクビシン、サルが入ってくる。荒れた室内は動物の臭気が鼻を突く。先祖伝来の家屋敷を守ろうと、苦労して掃除しても荒廃は進む。「先行きが見えなければ、たいがいの人は気持ちがポキッと折れてしまう」。荒廃した家を次の世代に引き継ぎたくない人も多い。伊沢町長は現状を分かっている世代のうちに、避難指示解除の方向性を示す必要があると訴える。

 国は飯舘村からの要望を受け、全面的な除染を行わずに解除する手法を検討している。だが、どのくらいの線量であれば安全・安心と断言できるのか、分からない。「住民が戻って生活するためには徹底した除染が必要だ。除染をしないという結論はあり得ない」

 町が全域を復興拠点とするよう求めたのには根拠がある。拠点外はかつて線量が高く、百年は戻れないとの見方が広がっていた。だが現在は自然減衰などにより、拠点外の大部分は旧居住制限区域(年間積算線量二〇~五〇ミリシーベルト)以下となっている。

 一方、拠点外で中間貯蔵施設用地を除き、宅地や農地など除染が必要となる範囲は約五百三十ヘクタールとの町の試算がある。除染や解体が進んでいる復興拠点の面積と同程度だ。「何の根拠もなく全域を解除してほしいと言っているわけではない。可能性があるからやってくれと頼んでいるんだ」。全町避難が続く唯一の町として、拠点外の見通しを立てたいという切実な思いがある。

    ◇  ◇

 「一括で拠点に認定される道筋が立てば、住民の不安が取り除かれ、もう少し頑張ろうという気持ちになってもらえるのではないか」。伊沢町長は要望に込めた思いを明かす。

 要望内容が報道されると、県や周辺の市町村に驚きの声が広がった。「何を考えているんだ」と、無謀な要望とみなす声も聞こえてきた。

 「一方的にハードルが高い要望を投げ掛けたかもしれない。ただ、原発事故から十年近くが過ぎ、国の反応がぼやけてきている。状況を打破する突破口にしたい」。着実に進む風化にあらがう決意がにじむ。