【菅政権の経済政策】地方の暮らし最優先に(10月27日)

2020/10/27 09:17

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 菅義偉首相は二十六日の所信表明演説で、自ら取り組む経済政策の考え方を明らかにした。観光の推進や農業改革により地方の所得を増やし、消費を活性化すると強調した。新型コロナウイルスの感染拡大により、地方の産業を取り巻く環境は厳しさを増している。新政権の取り組みが県民と県内企業にとって、少しでも将来に展望が持てるものになるよう願う。

 菅首相は前政権の経済政策「アベノミクス」を継承する方針を打ち出している。八年近く続く大胆な金融緩和策は「デフレ脱却や経済再生に道筋を付けた」と経済団体幹部から評価を得ている。ただ、日銀の対応も含め、資金をいかに潤沢に供給していくのかという金融技術論的な側面にばかり注目が集まり、経済国家としての大きな目標や、それに基づく政策論議が欠けたままになっていた印象が否めない。だからこそ、「一億総活躍」「地方創生」といった看板政策が細切れで空疎に映り、いまひとつ成果を実感できない要因になっているのではないか。新たなリーダーは、同じ轍[てつ]を踏んではなるまい。

 地方経済活性化を前面に打ち出し、国民的な関心と議論を喚起して目標の達成を図るべきだ。「地方の所得拡大を目指す」と宣言したからには、まず何よりも地方企業の振興に注力する必要がある。会社の仕事が増えなければ従業員の給与は上がらない。

 県内の中小企業の経営者からは今、「現場で働く人手が欲しい。会社を支える人材も不足している」という切実な訴えが聞かれる。少子高齢化が進む中、地方の課題を地方だけで解決するのは厳しい。所信表明演説で自ら意欲を見せたが、大企業の勤務経験者を地方企業に紹介する取り組みを活発化させてほしい。都会から人が移り住むきっかけにもなる。最初の外遊先として選んだ東南アジアから優秀な若い人材を発掘し、国が中小企業との橋渡しをしてはどうか。彼らが母国への輸出戦略を練り上げるようになれば、国際経済の新たな展望が開けるだろう。

 地方経済再生には、現状の把握が欠かせない。官僚も含め政策立案に携わる人たちが過疎地の工場や農家に一定期間滞在し、住民の要望を聞いて国の事業に反映させるよう提案する。

 額に汗して懸命に働き、家庭を守り、活力が失われつつある地域のために尽くす人の姿を政治は決して忘れてならない。雪深い秋田県の農家に生まれ育った菅首相は、それを誰より理解していると信じたい。(菅野龍太)