再生利用の成否が鍵 除染土減容化見通せず【復興を問う 帰還困難の地】(53)

2021/02/12 08:55

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長泥行政区の復興拠点内では除染土壌を再生利用するための施設の整備が進む
長泥行政区の復興拠点内では除染土壌を再生利用するための施設の整備が進む

 東京電力福島第一原発から北西に約四十キロ。阿武隈山系の高原に位置し、畜産業や稲作が盛んだった飯舘村は原発事故で計画的避難区域が設定され、一時、全村避難を余儀なくされた。今はほとんどの区域で避難指示は解除されたものの、帰還困難区域となった村南部の長泥行政区は取り残されている。

 長泥行政区では村内で出た除染土壌を再生利用して農地を造成し、作物を栽培する実証試験が二〇一九年度に本格的に始まった。行政区の総面積約千八十ヘクタールのうち、約百八十六ヘクタールが特定復興再生拠点区域(復興拠点)に認定され、このうち三十四ヘクタールが農地造成の予定地になっている。

 実証試験は盛り土実証ヤードと呼ばれる農地で行われている。住民らの協力を得て、これまでにキュウリやレタス、ホウレンソウなどを収穫した。

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 除染土壌の再生利用は政府にとって、除染廃棄物の最終処分に向けた鍵となる。大熊、双葉両町の中間貯蔵施設に運び込まれる土壌や草木の量は東京ドーム約十一個分に相当する。量を減らせなければ最終処分場も広大な土地が必要となり、用地確保は極めて困難な状況に陥る。法律で定めた県外での最終処分を実現するには、再生利用により処分量を減らさなければならない。

 実証試験には一キロ当たりの放射性セシウム濃度が五〇〇〇ベクレル以下の土壌を用いている。基本的にはその上に汚染されていない土を約五十センチの厚さで覆って栽培しているが、一部では覆土しない状態での生育実験も行っている。

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 環境省は昨年十二月、覆土していない除染土壌で直接栽培した野菜に含まれる放射性セシウム濃度を公表した。インゲンは一キロ当たり〇・四ベクレル、キャベツは一・六ベクレルなどとなり、食品衛生法の基準値(一キロ当たり一〇〇ベクレル)を大きく下回った。

 環境省は長泥行政区での実証事業で安全性をPRし、道路や農地の盛り土など公共工事で再生利用を進める計画だ。環境省福島地方環境事務所の百瀬嘉則土壌再生利用推進室長は「学生や有識者などを現地に案内すると、多くは好意的に受け止めてくれる。正確な情報をもっと発信し、全ての国民に対し理解の醸成を図っていきたい」と意気込む。

 ただ、住民からは「除染で発生した土で栽培した野菜が一般の人に受け入れられるのだろうか」「県内での再生利用だけでは国民理解を得られないのではないか」と疑問の声が上がる。

 再生利用の仕組みが確立されたとしても、それを積極的に使おうとする機運が全国的に高まるのか。事業が軌道に乗らなければ、大量の除染土壌の行方はどうなるのか-。除染土壌の県外搬出が進まなければ、住民が帰ることのできない広大な土地が復興の足かせとなる懸念がある。住民の不安は尽きない。