進捗状況にばらつき 地域ごとに課題複雑化 震災・原発事故10年総括(上)

2021/02/27 08:32

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 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から三月十一日で丸十年を迎える。県は二〇一一(平成二十三)年十二月、県復興計画を策定し、未曽有の複合災害からの県土再生に取り組んできた。福島県は復興・創生の推進に加え、急激な人口減少への対応も求められている。内堀雅雄知事が掲げる「復興の進化」をいかに実現させるのか。二〇二一(令和三)年度から十年間の方向性を示す第二期県復興計画の策定に向けた議論が佳境を迎えている。


■次期県復興計画
 二〇二〇年度末が終期となる現行の復興計画は避難地域等復興加速化をはじめ、生活再建支援や環境回復、新産業創造など、再生を前に進める上で欠かせない十の重点プロジェクトで構成されている。復興関連事業の進捗(しんちょく)は、それぞれの指標の達成状況から判断してきた。

 指標のうち、市町村除染地域の住宅除染は二〇一七年度に完了。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける前には観光客の入り込み数(二〇一九年)や農業産出額(二〇一八年)は震災前の九割超に達するなど復興の兆しが見えてきている。だが、県内外への避難者は依然として約三万六千人おり、二〇二〇年度末目標の「避難者ゼロ」の達成は困難な情勢だ。試験操業が続く沿岸漁業の産出額(二〇一九年度)は目標の二割程度となる約二十億円にとどまっており、分野によって進度に差が見られる。

 第二期県復興計画は「避難地域等の復興・再生」「ひと」「暮らし」「しごと」を基本的な視点として、重点プロジェクト数を十から「避難地域等復興加速化」「人・きずなづくり」「安全・安心な暮らし」「産業推進・なりわい再生」の四つに再編する。県は震災から十年間の施策を分析し、重点的に取り組む課題を抽出しながら復興の加速を目指す。


■市町村で差異
 「震災、原発事故から十年が経過し、市町村が抱える問題は多様化している」。第二期県復興計画の内容を協議する県総合計画・復興計画策定検討部会長の川崎興太福島大共生システム理工学類准教授(50)は指摘する。

 川崎准教授によると、震災直後、県内の各市町村は除染やインフラ復旧など生活基盤に関する共通課題の解決に向け、同じ方向を向き復興を進めてきた。だが、十年の時の流れは地域ごとの課題を多様化させていったという。川崎准教授は昨年、五十九市町村を対象に復興に関するアンケートを実施。課題を聞いた設問で、原発事故の避難区域が設定された十二市町村の全てが「コミュニティの維持・再生」と回答した。一方、十二市町村を除く浜通り・中通り(三十市町村)では全体の二割弱、会津地方(十七市町村)は一割未満しか同じように課題と捉えていない。

 「雇用の創出・産業の集積」でも同様の傾向がみられ、地域ごとの課題に差異が生じている。川崎准教授は「真の復興には、きめ細やかな対応が必要。幅広い意見を聞き、計画に反映させていきたい」と話す。


■進む人口減少
 震災と原発事故は、以前からの課題であった人口減に拍車を掛けた。県内の推計人口は震災前の二〇一一年三月一日が二百二万四千四百一人だったのに対し、今年二月一日では百八十一万九千二百三十六人にまで落ち込んだ。減少を食い止める取り組みは、復興と並ぶ喫緊の課題となっている。

 県は減少幅を可能な限り抑えるため、交流人口の拡大や移住・定住促進に力を注いできた。県内への移住実績は二〇一九年度は五百九世帯となり、過去最高を更新。新型コロナウイルス感染拡大の影響による生活様式の変化で、今後一層の移住者増加も見込まれる。

 ただ、県人口ビジョンで二〇四〇年に百四十三万人になるとの試算を示しているように、抜本的な解決策は見通せていない。出生率の底上げや雇用の場の創出による人材確保、UIターンの促進など県部局の横断的な対策強化は不可欠となっている。

 内堀雅雄知事は十二日に開会した二月定例県議会の冒頭、台風19号や新型コロナ感染拡大などを挙げ福島県が三重、四重の困難を抱えているとの認識を示した上で「十年間の成果を原動力に、福島の未来を形づくる新たな挑戦を続ける」と意欲を示している。