高校生のシゴト力

明日を創る

 次世代を担う高校生が若い感性と柔軟な発想で新たな事業を生み出す。行政や民間、住民らと連携し、商品開発や産業創出などを通し、地域を元気にする。福島民報社は、東北と新潟の有力紙8社共同で「高校生のシゴト力~明日を創る~」をテーマに、挑戦する生徒の姿を8回にわたって紹介する。 

柏木農業高(青森県・平川市)11月17日付

柏木農業高(青森県・平川市)

刻んだリンゴに砂糖やクエン酸を加え、ジャムを作る柏木農業高校の生徒たち=10月18日、平川市の同校

柏木農業高(青森県・平川市)

瓶詰めしたジャムの状態確認やラベル貼り、最終チェックをする柏木農業高校の生徒たち=10月18日、平川市の同校

柏木農業高(青森県・平川市)


 青森県平川市の柏木農業高(高野浩輝校長、生徒三百八十人)食品科学科の生徒たちは二〇一八年、自作のジャムを自分たちで交渉して台湾に輸出する取り組みを始めた。現地の市場視察をはじめ、作物の栽培、加工、瓶詰め、ラベル貼り、検品などを生徒主体で行い、若い高校生ならではの行動力でジャムを現地の商社に積極的に売り込んだ。

 柏木農業高は一六年一月以来、青森リンゴ最大の輸出先である台湾で、青果物の流通や販売動向を学ぶ海外研修を毎年行っている。市場視察のほか、日本食品などを取り扱う総合商社「寶吉祥」(台北市)を見学。日本全国の特産品が並ぶ同社直営の販売店で価格や味の好みなどを調べてきた。

 一七年一月、二度目の台湾訪問の際、寶吉祥に贈った自作のリンゴジュースを同社会長が「高校生が作ったジュースは初めて見た。面白い取り組みだ」と絶賛、ジュースの輸出が決まった。寶吉祥のバイヤーの助言を受け担当教諭が手続きをし、この年の七月に初めての輸出が実現した。

 一八年三月、台湾を訪問した一年生五人が、自分たちのジュースが評判になっていることを聞いた。「ジュースが売れるのなら、他の加工品も売れるはず」。チャンスと考えた生徒たちは急きょ、学校PR用に持参していた自作のジャムを寶吉祥のバイヤーに熱くセールスした。現在は三年生の丹代恵弥さん(18)は「初めて行った海外で突然商品を売り込むことになって、とても緊張した」と当時を振り返る。

 生徒の熱意が寶吉祥の会長に伝わり同年六月、マーマレード、リンゴ、アップルカシスの三種類、計六十個(一個二百グラム)のジャムの輸出が実現。国内では一個約三百五十円の商品が現地では三~四倍の値段で店頭に並んだ。小玉吉樹教諭(40)は「その場でジャムを売り込もうとしたのは、高校生ならではの勢い。寶吉祥も応援したいと言ってくれた」と話す。

 ジャムの製造は、高校の敷地内などで採れた果物を細かくして大きな鍋で加熱。砂糖やクエン酸を加えながら味を調整した後、瓶にジャムを詰めてラベルを貼り、検品などを行う。三年生の新橋利章さん(17)は「完成までに種を取り除いたり、瓶が欠けていないか確認したり、大変なことが多い」と語る。

 これまで十回以上の輸出を重ね、ジャムの販売量は五百五十個以上になった。取り組みは優良事例として農業白書(食料・農業・農村の動向)で紹介された。

 海外研修や商品の売り込みを経験し「物おじしなくなった。今では大舞台でも自信を持って発言できる」と丹代さん。三年生の齊藤隼成さん(18)は「海外との味覚の違いなどを学んだ。将来は海外で通用する新しいスイーツを作りたい」と意欲を燃やしている。

【取材 東奥日報】

支える人たち

県産品の目玉商品に 産直センターひらか仕入れ担当 三浦登喜江さん

平川市にある津軽みらい農協の「産直センターひらか」には、柏木農業高校の生徒たちが作ったジャムやみそなどを販売する特設コーナーがある。ジャムはマーマレード、スグリ、イチゴの三種類を並べている。

 仕入れを担当する三浦登喜江さん(63)は「ジャムは普段から一定数売れていて、家族や親戚へのお土産として一気に十個買う人もいる。お盆や正月には、帰省客向けの青森県産品コーナーにも置くぐらい目玉商品になっている」と話す。

 台湾へのジャムの輸出については「積極的に海外に売り出す意欲はすごい。海外で知られることで、日本全国でも有名になればいい。これまでの経験を生かし、輸出するジャムも自信を持って作ってほしい」とエールを送った。

 

失敗恐れずに挑戦を 柏木農業高実習講師 小野好弘さん

 柏木農業高の実習講師の小野好弘さん(65)は、二〇〇九年四月からジャムのほか、みそ、ジュースなどの製造・加工技術を生徒たちに教えてきた。

 輸出するジャムの種類は生徒たちと話し合って決めている。人気の「アップルカシス」はもともと、校内で栽培しているリンゴとカシスを使ってオリジナルのジャムを-と考えて作り出したもの。今では「イベントで販売すれば、真っ先に売り切れるほどの人気の品」になっている。

 海外で日本の食品が評価されている理由の一つは、常に一定の品質が保たれていること。果物は毎年、味が微妙に変わるため、加える砂糖の量などを変え、同じジャムの味を保つようにしているという。

 「品質を下げないため、細かいところに気を配るよう生徒たちに教えている」と小野さん。「生徒たちのアイデアから新しい製品が生まれることもある。今後も失敗を恐れず、自信を持って挑戦してほしい」と期待している。

高田農業高(新潟県・上越市)11月10日付

高田農業高(新潟県・上越市)

第3弾となるドレッシングの開発へ、さまざまな素材を使って試作する生徒たち=9月25日、新潟県上越市の高田農業高

高田農業高(新潟県・上越市)

審査員らを前に、高田農業高が開発した商品に使用するロゴマークのプレゼンテーションを行う生徒たち=9月9日、新潟県上越市の高田農業高

高田農業高(新潟県・上越市)地図


 新潟県上越市の高田農業高(竹内正宏校長、四百七十二人)の食品科学科の生徒は昨年からJAえちご上越の複合販売施設「上越あるるん村」と連携して、特産の「雪室ニンジン」を使ったドレッシングを開発している。既に第二弾の「雪室ニンジンドレッシング まろやか白味噌(みそ)味」が二月に発売され、売れ行きも好調。現在は第三弾を開発中だ。

 雪室ニンジンは上越市内で収穫されたニンジンを雪室施設で貯蔵したもので独特の甘さが特長。第一弾「雪室ニンジンドレッシング」は上越あるるん村が開発。一年で約三千本を売り上げるヒット商品となった。

 第二弾は上越あるるん村関係者が昨年、同校で授業をしたことをきっかけに、当時の三年生約二十人が九月から授業の中で開発することになった。ベースは同じ雪室ニンジン。同校で食品製造と調理などを教える倉重あつ子常勤講師(42)は「最初は作れるのか不安だったが、面白そうだとも思った」と振り返る。

 主役はあくまで野菜だ。「ドレッシングが野菜に勝ったら駄目、と生徒と話し合った」と倉重講師。生徒は年間を通じて加工できる食材探しから始めた。カボチャやタマネギ、ニンニクなど多様な素材を試したが、味が濃くなり過ぎるなど、どれもうまくいかなかった。

 そんな中、生徒からみそを使うアイデアが出てきた。誰もが予想しない素材だったが、白みそを使うことで甘く優しい味に仕上がった。上越あるるん村関係者は「上越は『発酵のまち』だが、みそはまったく考えていなかった」と、生徒の発想に驚きを隠せない。

 当時の三年生でリーダー的な役割を果たした吉川未希さん(18)は「意見を出してもらうのが難しく『違う考えでも言ってほしい』と伝えた。たった一つの商品を作るだけなのにこんなに大変なんだと思った」と語る。苦労のかいあって「雪室ニンジンドレッシング 白味噌味」は、第一弾とともにことし七月、市が認証する特産品「メイド・イン上越」に加わった。

 現在、同学科の三年生十八人が先輩の後を継ぎ、第三弾開発に取り組む。生徒は昨冬、雪室ニンジンの収穫を体験。先輩が開発した商品の対面販売もするなど経験値を上げてきた。小出茉依さん(18)は「対面販売のときに聞いたお客さんの感想を思い出しながら素材を考えている」と体験を商品作りに生かしている。

 商品開発だけでない。生徒はデザイン専門家の指導も受けながら、同校開発商品に使用するロゴマークも作成。高田農業高ブランドのイメージアップも図る。

 「第一弾は酸味、第二弾は甘みだった。味覚で残っているのは辛味、塩味、うま味の三つ。試作品を見て決めていく」と倉重講師。十二月ごろまで七、八回の試作を経て、第三弾は早ければ来年二月にも上越あるるん村の店頭に並ぶ予定だ。

【取材 新潟日報社】

支える人たち

JAえちご上越園芸畜産課 亦野 潤一さん

 JAえちご上越の複合販売施設「上越あるるん村」は二〇一八年三月、第一弾「雪室ニンジンドレッシング」を発売。第二弾の商品開発を高田農業高に依頼した。「試作段階で奇抜な案がたくさん出たが、徹底的にいい商品を作ろうとする姿勢はすごかった」と、園芸畜産課の亦野(またの)潤一さん(33)。納得するまで味に妥協しない生徒の取り組み方に感心している。

 自由な発想で、上越らしい商品開発をしてほしいと生徒に伝えていたが「白みそを使うアイデアは全くの想定外だった」と振り返る。「第一弾を超える商品開発という点で生徒は苦労したと思うが、白みそ味は試作品の段階から抜群においしかった」という。

 第二弾も第一弾と同じペースで売れていて、第三弾にも期待がかかる。「地域農業の振興もJAの役割。高校生が間に入ることで、JAと地域の距離が縮まった。将来は地元振興のためにこの経験を生かしてもらいたい」とエールを送る。

上越教育大大学院教授 野口 孝則さん

 上越教育大大学院の野口孝則教授(46)は、商品開発に携わる高田農高生にアドバイスしてきた。商品作りという共通の目的へ向かい、失敗を繰り返しながらも、アイデアを出し合う高田農高生の姿に意欲と熱意を実感している。

 「大人は専門に特化し極めようとするが、彼らは大人が気付かないことに気付くことができる」。高田農高生の発想力の背景には、普段の授業を通じて学んだ食品などの基礎知識があると分析する。

 一方、生徒が「大豆バター」作りに挑戦したとき、バターとしてはいまひとつだがほかの食品に入れる具材と考えれば魅力的な商品となり得ると指導。生徒に発想の転換も促してきた。

 「生きる力は工夫して発想する力。価値感覚を養う上で、地元の食材で商品開発するのは重要な学びとなる」。大人と高校生がうまく連携すれば、授業としても、ビジネスとしても成り立つと期待している。

ふたば未来学園高(福島県・広野町)11月3日付

ふたば未来学園高(福島県・広野町)

そろいのエプロンと帽子で、笑顔で接客する生徒(左側)=10月9日、広野町・ふたば未来学園

ふたば未来学園高(福島県・広野町)

地域の課題について住民らと話し合う生徒=10月9日、広野町・ふたば未来学園

ふたば未来学園高(福島県・広野町)


 本県の教育復興のシンボルとなる広野町の県立中高一貫校「ふたば未来学園」(丹野純一校長、中学生八十一人、高校生三百六十二人)の校舎内で、高校生が部活動の一環としてカフェを運営している。訪れた住民との交流を通して地域の課題に向き合い、解決に向けて共に知恵を絞る場となっている。東日本大震災、東京電力福島第一原発事故からの復興に挑もうと、若い力が地域との団結を強めて奮闘する。

 カフェは六月にオープンした。四月のふたば未来学園中の開校に伴い、中学、高校を併設する形で整備された新校舎の一角に、温かな雰囲気のカウンターや客席が並ぶ。「いらっしゃいませ」。放課後、そろいのエプロンと帽子を着用して接客する生徒たちの明るい声が店内に響き渡る。

 原発事故で休校を余儀なくされた双葉郡内の県立高五校を集約する形で、中学に先立ち二〇一五(平成二十七)年に高校が開校して四年。一期生の生徒たちが地域一丸となって復興に向かうため「学校を人の集まる場にしたい」と抱いた思いを後輩たちが受け継ぎ、カフェ開設という形で実現させた。

 店名は「cafeふう」。タンポポの綿毛が「ふう」と飛ぶように、この場所から未来に羽ばたきたいとの願いが込められている。地域活性化を目指す部活「社会起業部」の部員有志によるカフェチームが運営し、経営母体として一般社団法人「たんぽぽ」を設立した。生徒が研修を重ねてハンドドリップの技術を磨いたコーヒーや手作りケーキなどのスイーツが人気だ。売り上げは、生徒自らが考える新商品開発や、授業中の営業時間に雇っているアルバイトの給与などに充てている。

 カフェは授業を終えた生徒をはじめ、地域活性化に取り組む住民やNPO関係者など、さまざまな立場の人でにぎわう。オープンから五カ月を迎えるが、今も百人以上が訪れる日もあり、客足は途切れない。カフェチームリーダーで二年生の是次美優さん(16)は「お客さまに飽きられない工夫など課題はあるが、地域に愛されるカフェとして定着してきた」と胸を張る。

 高校は開校時から生徒自らが地域の課題を見つけ、解決策を考える独自の授業「未来創造探究」を取り入れている。生徒はカフェで校外の人とも交流、地域を巻き込んで被災地の将来像を描こうとする取り組みが加速している。

 カフェは全国的に注目されつつある。八月には高校生が地域課題への取り組みを発表する「第四回全国高校生ソーシャルビジネスプロジェクト(SBP)チャレンジアワード」で、カフェチームが最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。是次さんは「今後は世界に目を向け、カフェ運営の中で脱プラスチックや食品ロス削減などの課題の解決策を考えたい」と力を込めた。

【取材 福島民友新聞社】

支える人たち

学校支援コーディネーター 横山 和毅さん

 カフェがあるスペースの一角には、全国で教育支援活動を展開しているNPO法人カタリバが常駐している。メンバーの一人で学校支援コーディネーターの横山和毅さん(31)は「生徒と住民の距離が縮まり、授業以外の学びの場となっている」とカフェ開設の意義を強調した。

 カタリバは、二〇一七(平成二十九)年にふたば未来学園高に迎えられ、放課後の学習支援などで生徒をサポートしてきた。横山さんは生徒が授業「未来創造探究」などで設定した地域課題について、専門知識を持つ人を紹介するなどコーディネート役も担っている。カフェ店内の模様替えの際にはアドバイスなどを通し、生徒とともに魅力的な空間づくりに取り組む。

 横山さんは「地域に住んでいる人しか分からない課題や思いがある。より気軽に足を運べるよう工夫を凝らし、復興に向けた学びが加速する場にしたい」と意気込んだ。

 

立教大学経済学部1年 石井 美有さん

 「カフェに立つ後輩のりりしい姿が誇らしい」。カフェ開設の準備に携わり、今春にふたば未来学園高を卒業した石井美有さん(18)=立教大経済学部一年=は感慨深げに話す。

 石井さんは同高の専門分野を学ぶスペシャリスト系列で経営や商品開発などを学んだ。飲食関係の仕事に就きたいという将来の夢の実現に向け、三年の夏にカフェ開設の準備に追われていた社会起業部に入部。店名「cafeふう」を考案するなど準備の中心を担った。

 古里は、東京電力福島第一原発事故の影響で全町避難が続く双葉町。「復興の力になりたい」。そんな思いで大学進学と同時に一般社団法人「結び葉」を設立。首都圏で母校の後輩が開発した商品の販売会を企画するなど古里の魅力PRに奔走している。

 今後もカフェチームを含め後輩たちに新しい商品の開発や販売、販路開拓といった実践を積み重ねる機会を提供するつもりだ。石井さんは「大学の震災ボランティアサークルとも連携し、首都圏と古里をつなぐ取り組みを強めたい」と力を込める。

遠野緑峰高(岩手県・遠野市)10月27日付

遠野緑峰高(岩手県・遠野市)

完成した商品を携えて販売に臨む生徒。消費者の声を聞く貴重な機会だ=10月5日、岩手県遠野市・道の駅遠野風の丘

遠野緑峰高(岩手県・遠野市)

琴畑カブヤマブドウ漬けを作る生徒=10月3日、岩手県遠野市・遠野緑峰高

遠野緑峰高(岩手県・遠野市)地図


 岩手県遠野市の遠野緑峰高(菊池勇校長、生徒百四十七人)は近年、地域の農業資源の付加価値を高め、地場産業の活性化をリードする研究に力を入れている。その一つが、生産技術科野菜果樹研究班による伝統野菜・琴畑カブの再生プロジェクトだ。

 琴畑カブは色鮮やかな紫色とあっさりした味が特長で、かつては漬物として遠野地域の家庭の食卓を彩った。だが、連作障害の影響を受けやすく、生産性も低いことから次第に担い手が減り、三十数年前に事実上生産が途絶えた。

 時は過ぎ二〇一三(平成二十五)年、同研究班が「地場食材の価値を高めたい」と復活栽培に乗り出す。元生産者の指導で害虫対策や有機栽培など試行錯誤を重ね、年度を超えて生産ノウハウを積み重ねた。

 先輩からのバトンを受け、次なる課題の「商品開発」に挑んだのが本年度の三年生六人だ。「学校の中で作っているだけではもったいない。多くの人に食べてもらえることが、農家の励みになるはず」。六人は二年時の昨年から研究に着手した。

 カブをマフィンにしたり、浅漬けにしたりと商品試作を展開したが、満足いくものはできず。行き詰まりを感じていたとき、地元漬物職人の「ヤマブドウを使ってみては」との助言が活路を開いた。

 カブ元来の紫色を引き立て、爽やかな酸味はアクセントになる。塩漬けの後にしょうゆ漬けにし、最後に地元産ヤマブドウをもみ込む。昨年冬に完成した第一弾商品「琴畑カブヤマブドウ漬け」は、全日本漬物協同組合連合会が主催する漬物グランプリ二〇一九決勝大会(四月、東京)個人の部で、日本一に輝いた。

 自信を得た六人は本年度、商品の市場流通と生産の安定化という二つのテーマを並行して進めている。生産面では、ハウス栽培の技術確立。適切な室温の見極めなど、通年多期作の可能性を追求している。

 市場流通面では、地域との連携を意識。コミュニティー食堂や、出張型デイサービスへの漬物提供を始めたほか、道の駅などでの販売も強化し、知名度の向上を図っている。

 生徒の熱意は地域にも波及。本年度から琴畑カブの作付けを増やす農家が現れたほか、レストランからの申し出でカブを生かした新メニュー開発に協働するなど、地場産業に新たな風を吹き込んでいる。

 菊池真捺(まお)さんは「地域の皆さんの協力があって研究を続けられている。琴畑カブが新たな遠野の宝となるよう、生産量の安定と市場流通を目指したい」と意気込みを示す。

 指導する前原達也教諭(44)は「目標が明確になり、生徒の目の色が変わった。地域の支えへの感謝を大切に、自主性を育んでほしい」と見守る。

【取材 岩手日報社】

支える人たち

漬物製造販売業 工藤 古寿さん

遠野伝統野菜研究会副会長 高橋 義明さん

 「やる気、情熱がなければ生まれなかった商品。本当によくやった」。遠野市綾織町で四十年以上漬物製造販売を手掛ける工藤古寿(ひさとし)さん(76)は、若人の活躍に目を細める。生徒が研究に行き詰まっていた時、ヤマブドウ漬けの試行を提案した本人だ。

 助言を求めにきた生徒らに、工藤さんは自信を持って答えた。職人の「勘」。ヤマブドウがカブの紫色を引き立て、かつ酸味が素材本来のうま味を引き出すと考えた。「野菜の味を生かしながら、多様な味を生み出せる。それが漬物の魅力」。心意気は、生徒に確かに伝わった。

 生徒は一から漬物を学び、砂糖や塩分の配合を何度も試行錯誤。販売実習先で試食者から評価を聞き、味のバランスを調えた。

 工藤さんは「食卓に合う漬物の味は時代とともに変化する。自分はあくまで助言だけ」と一歩引いた位置から応援。「消費者の顔を思い浮かべながら、一つ一つの素材に心を込める。逆に漬物職人としての原点を思い出させてくれた」と感心する。

 生徒の実直な姿勢は、地域の農家にとっても大きな刺激だ。遠野伝統野菜研究会(佐々木定則会長)の高橋義明副会長(56)は「柔軟なアイデアと行動力。今やこちらが追い掛ける側かもしれない」と感服する。

 同研究会は、琴畑カブの再生プロジェクトを当初から支援。かつての生産農家がノウハウを伝授し、農機具も貸与。店頭販売の応援にも駆け付けるなど地域を挙げた「応援団」を自認し、大きな期待を寄せてきた。

 ここ一年で急速に脚光を浴びた琴畑カブ。高橋さんは「地域住民に身近な食材として認知してもらうことが、販路拡大への第一歩」とみる。「地元店舗や消費者の応援がないと、一過性で終わってしまう。生徒が代替わりしても継続して研究を続けられる環境を整備できれば」とさらなる後押しを誓う。

小野高(福島県・小野町)10月20日付

小野高(福島県・小野町)

石垣市訪問を前に、商品を試食する生徒=10月9日、小野町・小野高

小野高(福島県・小野町)

商品のPRに向け、特徴などに意見を交わす生徒=10月9日、小野町・小野高

小野高(福島県・小野町)地図


 小野町の小野高(小針幸雄校長、生徒二百四十四人)は、約二千百キロ離れた沖縄県石垣市の八重山農林高と連携し、特産品を生かした菓子やパンなどの六次化商品を開発した。生徒が育てた農産物を原料に、郷土料理を組み合わせた。若い感性でユニークな商品を生み出すとともに、石垣市の文化や歴史に触れ、経験を積む。高校同士の交流は小野町と石垣市の都市間に発展し、広がりを見せる。

 小野町出身で名誉町民の小泉武夫東京農大名誉教授が石垣市の「経済大使」に委嘱されている縁で、小野高は二〇一六(平成二十八)年十二月に八重山農林高と友好協定を結んだ。両校とも地場産品を生かした加工食品づくりに熱心で、相乗効果が生み出されると考えた。友好協定に基づき、生徒十人は毎年、石垣市を訪れ、交流している。

 交流三年目には、小野高と八重山農林高双方の材料を用いた商品の製造、販売が実現した。小野高で栽培したコメ「ひとめぼれ」の米粉と、石垣市のサツマイモ、タピオカ、鶏卵を使い、マドレーヌ、絞り出しクッキー、サツマイモケーキ、米粉パンを創作した。クッキーは小野町のエゴマと石垣市の黒糖でできており、カリカリとした食感が特徴。米粉パンの上には、町内に咲く八重桜の花弁を用いた桜の塩漬けがのっており、しょっぱい味がアクセントになっている。

 小野高はこれまでも、各家庭に伝わる「一升漬(いっしょうづけ)」をアレンジした「一笑漬(いっしょうづけ)ドレッシング」やミネラル野菜を使った「ミネラルトマトうどん」を開発してきた。訪問をきっかけに、小野町特産物と「石垣の塩」をコラボレーションした「味噌(みそ)」、「桜の塩漬け」などを作り、新たな魅力を加えた。

 六次化商品を開発する上で、食材を生産する農業クラブ、食品加工を担う家庭クラブ、商標登録を行うビジネス系列が連携してきた。自前の加工設備を持ち合わせていないため、食品を加工できる環境が整っている八重山農林高で製造している。訪問の際、商品の製造に臨み、学校祭で販売してきた。

 昨年度、訪問した三年の先崎佑太さん(17)は「自分たちが育てたコメが、黒糖でおいしい紅芋ケーキになった」と振り返る。高校の紹介映像をパソコンで作成した三年の佐藤華那さん(17)は「小野高や福島県の震災について、八重山の方々に上手に伝えることができた」と感想を語る。

 八重山農林高の生徒が福島県にやってくるときは、石垣市を訪問した生徒が案内役を務めている。小針幸雄校長(54)は「東北と南国沖縄県と環境が大きく違う中、若い者同士はすぐに仲良くなる。訪問した生徒たちは、いろいろな経験を通し、成長している。今後も交流を発展させていきたい」と願う。小野町商工会の吉田代吉会長(68)は「遠く離れた高校生同士が協力し一つの商品を作り上げる物語が素晴らしい」とたたえる。今年も十月三十一日から生徒が石垣市を訪ねる。

 小野町の大和田昭町長(72)や農業・商業の民間事業者ら約二十人が二月、石垣市を訪問し、特産品交流による「地域づくり協定」を締結した。官、民、学が連携し石垣市との交流を継続的に行い、地域協働連携を活発化させ、産業社会に対応する生徒の育成に関して、新たな展開が期待される。

【取材 福島民報社】

支える人たち

共に試作を繰り返す シェフリー松月堂 渡辺 和之さん

 小野町の中心部に、菓子店「シェフリー松月堂」がある。ご当地スイーツ「アイスバーガー」などで人気の店だ。後継者として菓子作りに精を出す渡辺和之さん(33)は、小野高と八重山農林高の六次化商品開発に協力している。

 小野町産のエゴマと、石垣市の黒糖を使った菓子を作れないか、との話が町や小野高からあった。すぐに思いついたのが、クッキーだ。「バトン」という商品がすでにあり、それにエゴマと黒糖を取り入れた。

 共に香りの強い食材なので、配合する分量に苦労した。エゴマが多すぎると黒糖の良さが失われ、逆になるとエゴマ独特の風味が感じられない。生徒と一緒に試食を繰り返した。「高校生のアイデアや意見は面白く、刺激になった」と話す。

 福島と沖縄。気候も食文化も違う土地の連携は意義深いと受け止めている。「菓子だけでなく、他のものでもつながっていければいい。互いに盛り上がっていきたい」

 

有効関係これからも 小野高教諭 尾形 雄一さん

 小野高の尾形雄一教諭(41)は昨年度の石垣市訪問に同行した。準備段階から関わり、生徒にアドバイスを送った。

 生徒は訪問前、石垣市で販売するお菓子の試作を繰り返した。材料の配合を変えるなど試行錯誤した。「生徒は普段から何事にも真面目に取り組む。大変だったろうが、弱音を吐かず黙々と作業していた」と振り返る。

 現地訪問は三泊四日の日程だった。施設見学や製造実習、販売などスケジュールはびっしり。それをこなした生徒の表情は、充実感にあふれていたという。帰郷後、ある生徒の感想には「別れを惜しむほどの絆ができた」と書かれていた。「やり遂げたことが大きな自信になったようだ」と受け止める。

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生後、被災地はさまざまな支援を受けた。石垣市訪問の際も「福島の力になりたい」との声に触れた。「恩返しできるよう、手を取り合う関係を続けてほしい」と期待する。

村山産業高(山形県・村山市)10月13日付

村山産業高(山形県・村山市)

培養室でエンドファイトや植物を管理する生徒=9月20日、村山市・村山産業高

村山産業高(山形県・村山市)

エンドファイトの入った液体をじょうろでソバにかける生徒=9月9日、村山市

村山産業高(山形県・村山市)地図


 山形県村山市の村山産業高(大山慎一校長、生徒四百八十二人)農業部は、植物の内部で共生する微生物「エンドファイト」について研究している。微生物を培養した特定の菌液を地域特産のソバに与えると、収量が約三割増えることを発見。化学肥料の代わりにこの菌液を使えば、本県全体のソバに使われる肥料コストのうち約十億円が削減できると提唱した。実用化に向け研究が進む。  

 昨年の研究では、ソバの根部分から約四十種類のエンドファイトを抽出。それぞれの菌を純粋培養してソバに与え、比較しながら成長を促す菌種を探り当てた。実際の畑で栽培するソバにその菌液を与えたところ、菌がない状態と比べて約三割の収量増となることが分かった。 

 この結果を茨城県で開かれた未来の科学者を発掘する「つくばサイエンスエッジアイデアコンテスト」(今年三月)で発表した。化学肥料をこの菌液に代替することで肥料コストを大幅に削減できると提案した結果、最高賞の一つ「未来指向賞」を獲得した。さらにシンガポールで開催された国際アイデアコンテスト「グローバル・リンク・シンガポール」(七月)にも参加し、英語発表を通して世界へも発信した。 

 両コンテストに出場したともに三年の佐藤陽菜さん(18)と笹原悠馨さん(17)は「発表はとにかく緊張した。これからも、やり方を変えながら実験すべきことがたくさんある」と、さらなる展開を見据える。顧問の広瀬僚太教諭(35)は「普段の作業は地味だが、積み重ねることでようやく評価されるようになった」と話す。 

 研究のレベルは高校生の枠を超えている。日本土壌肥料学会(九月三~五日、静岡市)のポスター発表に二年鈴木千夏さん(17)が参加し、十八チーム中、最優秀に次ぐ優秀ポスター賞に輝いた。行政や民間機関の専門家、大学の研究者から質問を受け、研究に関するアドバイスももらった。 

 現在、エンドファイトの実験は真っ最中だ。実験室では、ソバの品種「でわかおり」「最上早生」などをポットで育て、培養した菌液と品種ごとの相性を調べている。実験と同時進行で畑ではソバも栽培。じょうろで菌液をかけ、与える種類、量でどのように収量が変わるかを調査している。 

 最終的な目標はエンドファイトの実用化だ。広瀬教諭は「求められる実験の精度、質は高くなっており、さらに上のレベルを目指している」と話す。二年の岩月叶さん(16)は「実験ではいろいろな条件を変えたり、効率化を図ったりしてみたい。成果が出るまでは努力は惜しまない」と力強く語った。
【取材 山形新聞社】

支える人たち

連作障害解消に期待 最上川三難所そば街道振興会長 佐藤 和幸さん

 おいしいそばで有名な山形県村山市。そば店でつくる「最上川三難所そば街道振興会」の佐藤和幸会長(57)は「エンドファイトの研究で肥料が減らせると聞き、多くの生産者は実用化を待ち望んでいる」と話す。 

 佐藤会長は同市の山の内地区でそば店「手打蕎麦おんどり」を営みながら、ソバ栽培にも取り組む。ソバは十アール当たりの収量が四十~五十キロと低い上、天候に左右されやすく高い栽培技術が求められる。二十年以上栽培しており、「ソバは短期間で成長する作物なのでたくさんの栄養が必要。連作障害が起きており、エンドファイトを使ってみたい」と期待を寄せる。 

 また、県内外の高校生がそばの手打ち技術とソバを使った創作料理を競う「そば甲子園」が九月に村山市で開催され、農業部は今年初優勝した。佐藤会長は審査員の一人で「ソバを使った菓子が断トツにおいしかった」と笑顔で話した。

 

元気の良さが好印象 道の駅むらやま駅長 寺崎 隆さん

 山形県内陸部の大動脈・国道一三号沿いにある道の駅むらやま。農業部が地域とつながる場となっており、寺崎隆駅長(49)は「さまざまなイベントに合わせて来てもらっている。一緒に頑張って、終わったときの満足感が心地よい」と生徒の活躍に目を細める。 

 今年初めて開催し、大盛況だったのは七月の「日本一早い芋煮会」。農業部が超促成栽培したサトイモを使って芋煮を作り、来場した約百人が一足早い山形の秋の味覚を味わった。また、そば甲子園で披露した菓子二品は、道の駅の来訪者を対象に試食、販売して味を磨き上げた。チョコケーキにそばの実を入れた「ソバノミ・ヘレダッケャ」と、そばの実を載せてキャラメルをかけたクッキー「ソバノミ・ノセダッケャ」は各所で好評だ。 

 生徒たちの元気の良さ、素直な笑顔が好印象という寺崎駅長は「道の駅はさまざまな世代が集まる地域の拠点。高校生が関わることで、さらに地域から愛されるようになれば」と話している。 

南郷高(宮城県・美里町)10月6日付

南郷高(宮城県・美里町)

給食での提供に向け、ソーセージを試作する南郷高の生徒たち=9月6日、宮城県美里町の「みーと工房 とんたろう」

南郷高(宮城県・美里町)

「活き生き田園フェスティバル」のソーセージ作り講習会で講師を務める生徒(右)=6月8日、美里町農村環境改善センター

南郷高(宮城県・美里町)地図


 宮城県美里町の南郷高(佐藤善則校長)で、産業技術科の生徒たちが「誰でもおいしく、笑顔で幸せになれる」をコンセプトに、ソーセージ作りに取り組んでいる。パプリカ、カブの葉など学校で育てた野菜を練り込み、添加物やうま味調味料を使わない「安心安全」が何よりの特長だ。 

 南郷高は普通科と産業技術科からなる県立高で、百十九人の生徒が学ぶ。 

 ソーセージ作りは、二〇一七(平成二十九)年度に産業技術科の三年生が「体にいい食品づくり」の授業で取り組んだのがきっかけだ。授業では満足いくものができず、有志三人が放課後に集まって試作を続けた。地域貢献活動で小学生との交流もあったため「おいしくて安全なものを子どもたちに食べてもらう」ことを目指した。
 取り組みは二〇一八年度の三年生に受け継がれ、町内の食品加工会社から具材を練り込む際の温度、塩を入れるタイミングの指導を受けるなど、試行錯誤を重ねた。十月の文化祭で来場者にも食べてもらい、年度末には「無塩せき野菜ソーセージ『あんしんソーセージ』」として商品化にこぎ着けた。製造・販売は指導に当たった加工会社が担当。町内の「花野果市場」、富谷市の「元気くん市場仙台店」で販売され、好評だ。 

 本年度は三年生十人がよりおいしく、多くの人に食べてもらうための企画、普及に力を注ぐ。色味で着目したのは赤ジソだ。赤い色素「ロズマリン酸」にアレルギー症状を抑える効果があると分かり、早速、栽培するなど改良に取り組んだ。五月には地元のイベントに続けざまに出品。六月には地元最大のイベント「活き生き田園フェスティバル」の実行委員会からソーセージ作り体験会の講師の依頼も舞い込み、子どもらに手ほどきした。 

 並行して進めたのが、学校給食への提供だ。学校側から町に打診し、ゴーサインが出た。「地域の高校、地域の豊かさをもっと知ってもらおう」と、同じ町内の小牛田農林高が育てる豚を自分たちの野菜と一緒に具材に使う案が浮上。岩佐広一さん(17)が「農業系高校同士のつながりを生かせる」と小牛田側に持ち掛け、実現した。 

 十一月十一~十五日に約二千食を提供する予定で、生徒たちはこの間、小中学校を回り、ソーセージについて説明する。樽石実奈さん(18)は「活動を通じ、食の安心安全を深く学んだ。子どもたちにもしっかり伝えたい」と話す。将来の夢は調理師になり、自分の店で料理を提供することだ。「思いを強く持ち、協力すれば願いはかなう」。三年間指導してきた山田利佳教諭(42)が生徒たちを優しく見つめた。 

【取材 河北新報社】 

支える人たち

生徒に製造法を指導 みーと工房とんたろう社長 鈴木 龍一さん

 南郷高に出向いて指導してきたのが、美里町内で手作りハム・ソーゼージ、牛タン加工品などを製造・販売している「みーと工房 とんたろう」の鈴木龍一社長(65)だ。生徒が講師を務めた「活き生き田園フェスティバル」のソーセージ作り体験会でも、現場でサポートした。 

 「決して十分でない学校の設備で作ったにしては、なかなかの出来だった」と初めて生徒たちがソーセージを持ってきた時のことを振り返る。それ以上に印象に残ったのが「安心安全」に懸ける生徒たちの思いだ。「自分が起業した時も同じ思いだった。当時の気持ちを呼び起こされた」 

 添加物や発色剤を使わない作り方も伝授。「次第に目の輝きが違ってくるのが分かった。『色はどうする』『栄養も豊かに』と一生懸命に考え、成長した」と目を細める。 

 「今後は自分たちが考案した商品を実際に仕入れて販売し、利益を得るまでを学べる環境があれば望ましい」と鈴木さん。「この経験は社会人になった時にきっと役に立つ。地元に残ってくれればなおうれしいね」と笑った。 


販売の機会を設ける 美里町産業振興課長 小林 誠樹さん

 地元の美里町役場は、学校で育てた野菜の販売に行く、いわば「お得意さま」。二〇一七(平成二十九)年には、産業振興課の職員が町の商品開発セミナーに生徒たちを誘った。農産物の付加価値を高めようと大人向けに開いたセミナーだが「生徒たちにも役立つのではないか」と考えたからだという。 

 小林誠樹課長(48)は南郷高の卒業生。ソーセージ完成後はマーケティングを兼ね、仙台市で今年二月に開かれた物産展に生徒たちを参加させた。用意したソーセージは瞬く間に完売。「消費者とじかに接し、アンケートを集めたのは勉強になったはず」と話す。 

 「地元の人と協力して一つの物を作り上げるのは大人でも難しい。地域に勇気のようなものを与えてくれた」と後輩の頑張りを評価する。今後も町としてできる支援をしていく考えだ。