高校生のシゴト力

明日を創る

 次世代を担う高校生が若い感性と柔軟な発想で新たな事業を生み出す。行政や民間、住民らと連携し、商品開発や産業創出などを通し、地域を元気にする。福島民報社は、東北と新潟の有力紙8社共同で「高校生のシゴト力~明日を創る~」をテーマに、挑戦する生徒の姿を8回にわたって紹介する。 

ソバ栽培に微生物 村山産業高(山形県・村山市)10月13日付

村山産業高(山形県・村山市)

培養室でエンドファイトや植物を管理する生徒=9月20日、村山市・村山産業高

村山産業高(山形県・村山市)

エンドファイトの入った液体をじょうろでソバにかける生徒=9月9日、村山市

 山形県村山市の村山産業高(大山慎一校長、生徒四百八十二人)農業部は、植物の内部で共生する微生物「エンドファイト」について研究している。微生物を培養した特定の菌液を地域特産のソバに与えると、収量が約三割増えることを発見。化学肥料の代わりにこの菌液を使えば、本県全体のソバに使われる肥料コストのうち約十億円が削減できると提唱した。実用化に向け研究が進む。  

 昨年の研究では、ソバの根部分から約四十種類のエンドファイトを抽出。それぞれの菌を純粋培養してソバに与え、比較しながら成長を促す菌種を探り当てた。実際の畑で栽培するソバにその菌液を与えたところ、菌がない状態と比べて約三割の収量増となることが分かった。 

 この結果を茨城県で開かれた未来の科学者を発掘する「つくばサイエンスエッジアイデアコンテスト」(今年三月)で発表した。化学肥料をこの菌液に代替することで肥料コストを大幅に削減できると提案した結果、最高賞の一つ「未来指向賞」を獲得した。さらにシンガポールで開催された国際アイデアコンテスト「グローバル・リンク・シンガポール」(七月)にも参加し、英語発表を通して世界へも発信した。 

 両コンテストに出場したともに三年の佐藤陽菜さん(18)と笹原悠馨さん(17)は「発表はとにかく緊張した。これからも、やり方を変えながら実験すべきことがたくさんある」と、さらなる展開を見据える。顧問の広瀬僚太教諭(35)は「普段の作業は地味だが、積み重ねることでようやく評価されるようになった」と話す。 

 研究のレベルは高校生の枠を超えている。日本土壌肥料学会(九月三~五日、静岡市)のポスター発表に二年鈴木千夏さん(17)が参加し、十八チーム中、最優秀に次ぐ優秀ポスター賞に輝いた。行政や民間機関の専門家、大学の研究者から質問を受け、研究に関するアドバイスももらった。 

 現在、エンドファイトの実験は真っ最中だ。実験室では、ソバの品種「でわかおり」「最上早生」などをポットで育て、培養した菌液と品種ごとの相性を調べている。実験と同時進行で畑ではソバも栽培。じょうろで菌液をかけ、与える種類、量でどのように収量が変わるかを調査している。 

 最終的な目標はエンドファイトの実用化だ。広瀬教諭は「求められる実験の精度、質は高くなっており、さらに上のレベルを目指している」と話す。二年の岩月叶さん(16)は「実験ではいろいろな条件を変えたり、効率化を図ったりしてみたい。成果が出るまでは努力は惜しまない」と力強く語った。
【取材 山形新聞社】

支える人たち

■連作障害解消に期待 最上川三難所そば街道振興会長 佐藤和幸さん

 おいしいそばで有名な山形県村山市。そば店でつくる「最上川三難所そば街道振興会」の佐藤和幸会長(57)は「エンドファイトの研究で肥料が減らせると聞き、多くの生産者は実用化を待ち望んでいる」と話す。 

 佐藤会長は同市の山の内地区でそば店「手打蕎麦おんどり」を営みながら、ソバ栽培にも取り組む。ソバは十アール当たりの収量が四十~五十キロと低い上、天候に左右されやすく高い栽培技術が求められる。二十年以上栽培しており、「ソバは短期間で成長する作物なのでたくさんの栄養が必要。連作障害が起きており、エンドファイトを使ってみたい」と期待を寄せる。 

 また、県内外の高校生がそばの手打ち技術とソバを使った創作料理を競う「そば甲子園」が九月に村山市で開催され、農業部は今年初優勝した。佐藤会長は審査員の一人で「ソバを使った菓子が断トツにおいしかった」と笑顔で話した。

■元気の良さが好印象 道の駅むらやま駅長 寺崎隆さん

 山形県内陸部の大動脈・国道一三号沿いにある道の駅むらやま。農業部が地域とつながる場となっており、寺崎隆駅長(49)は「さまざまなイベントに合わせて来てもらっている。一緒に頑張って、終わったときの満足感が心地よい」と生徒の活躍に目を細める。 

 今年初めて開催し、大盛況だったのは七月の「日本一早い芋煮会」。農業部が超促成栽培したサトイモを使って芋煮を作り、来場した約百人が一足早い山形の秋の味覚を味わった。また、そば甲子園で披露した菓子二品は、道の駅の来訪者を対象に試食、販売して味を磨き上げた。チョコケーキにそばの実を入れた「ソバノミ・ヘレダッケャ」と、そばの実を載せてキャラメルをかけたクッキー「ソバノミ・ノセダッケャ」は各所で好評だ。 

 生徒たちの元気の良さ、素直な笑顔が好印象という寺崎駅長は「道の駅はさまざまな世代が集まる地域の拠点。高校生が関わることで、さらに地域から愛されるようになれば」と話している。 

南郷高(宮城県・美里町)10月6日付

南郷高(宮城県・美里町)

給食での提供に向け、ソーセージを試作する南郷高の生徒たち=9月6日、宮城県美里町の「みーと工房 とんたろう」

南郷高(宮城県・美里町)

「活き生き田園フェスティバル」のソーセージ作り講習会で講師を務める生徒(右)=6月8日、美里町農村環境改善センター

南郷高(宮城県・美里町)地図


 宮城県美里町の南郷高(佐藤善則校長)で、産業技術科の生徒たちが「誰でもおいしく、笑顔で幸せになれる」をコンセプトに、ソーセージ作りに取り組んでいる。パプリカ、カブの葉など学校で育てた野菜を練り込み、添加物やうま味調味料を使わない「安心安全」が何よりの特長だ。 

 南郷高は普通科と産業技術科からなる県立高で、百十九人の生徒が学ぶ。 

 ソーセージ作りは、二〇一七(平成二十九)年度に産業技術科の三年生が「体にいい食品づくり」の授業で取り組んだのがきっかけだ。授業では満足いくものができず、有志三人が放課後に集まって試作を続けた。地域貢献活動で小学生との交流もあったため「おいしくて安全なものを子どもたちに食べてもらう」ことを目指した。
 取り組みは二〇一八年度の三年生に受け継がれ、町内の食品加工会社から具材を練り込む際の温度、塩を入れるタイミングの指導を受けるなど、試行錯誤を重ねた。十月の文化祭で来場者にも食べてもらい、年度末には「無塩せき野菜ソーセージ『あんしんソーセージ』」として商品化にこぎ着けた。製造・販売は指導に当たった加工会社が担当。町内の「花野果市場」、富谷市の「元気くん市場仙台店」で販売され、好評だ。 

 本年度は三年生十人がよりおいしく、多くの人に食べてもらうための企画、普及に力を注ぐ。色味で着目したのは赤ジソだ。赤い色素「ロズマリン酸」にアレルギー症状を抑える効果があると分かり、早速、栽培するなど改良に取り組んだ。五月には地元のイベントに続けざまに出品。六月には地元最大のイベント「活き生き田園フェスティバル」の実行委員会からソーセージ作り体験会の講師の依頼も舞い込み、子どもらに手ほどきした。 

 並行して進めたのが、学校給食への提供だ。学校側から町に打診し、ゴーサインが出た。「地域の高校、地域の豊かさをもっと知ってもらおう」と、同じ町内の小牛田農林高が育てる豚を自分たちの野菜と一緒に具材に使う案が浮上。岩佐広一さん(17)が「農業系高校同士のつながりを生かせる」と小牛田側に持ち掛け、実現した。 

 十一月十一~十五日に約二千食を提供する予定で、生徒たちはこの間、小中学校を回り、ソーセージについて説明する。樽石実奈さん(18)は「活動を通じ、食の安心安全を深く学んだ。子どもたちにもしっかり伝えたい」と話す。将来の夢は調理師になり、自分の店で料理を提供することだ。「思いを強く持ち、協力すれば願いはかなう」。三年間指導してきた山田利佳教諭(42)が生徒たちを優しく見つめた。 

【取材 河北新報社】 

支える人たち

■生徒に製造法を指導 みーと工房とんたろう社長 鈴木龍一さん

 南郷高に出向いて指導してきたのが、美里町内で手作りハム・ソーゼージ、牛タン加工品などを製造・販売している「みーと工房 とんたろう」の鈴木龍一社長(65)だ。生徒が講師を務めた「活き生き田園フェスティバル」のソーセージ作り体験会でも、現場でサポートした。 

 「決して十分でない学校の設備で作ったにしては、なかなかの出来だった」と初めて生徒たちがソーセージを持ってきた時のことを振り返る。それ以上に印象に残ったのが「安心安全」に懸ける生徒たちの思いだ。「自分が起業した時も同じ思いだった。当時の気持ちを呼び起こされた」 

 添加物や発色剤を使わない作り方も伝授。「次第に目の輝きが違ってくるのが分かった。『色はどうする』『栄養も豊かに』と一生懸命に考え、成長した」と目を細める。 

 「今後は自分たちが考案した商品を実際に仕入れて販売し、利益を得るまでを学べる環境があれば望ましい」と鈴木さん。「この経験は社会人になった時にきっと役に立つ。地元に残ってくれればなおうれしいね」と笑った。 


■販売の機会を設ける 美里町産業振興課長 小林誠樹さん

 地元の美里町役場は、学校で育てた野菜の販売に行く、いわば「お得意さま」。二〇一七(平成二十九)年には、産業振興課の職員が町の商品開発セミナーに生徒たちを誘った。農産物の付加価値を高めようと大人向けに開いたセミナーだが「生徒たちにも役立つのではないか」と考えたからだという。 

 小林誠樹課長(48)は南郷高の卒業生。ソーセージ完成後はマーケティングを兼ね、仙台市で今年二月に開かれた物産展に生徒たちを参加させた。用意したソーセージは瞬く間に完売。「消費者とじかに接し、アンケートを集めたのは勉強になったはず」と話す。 

 「地元の人と協力して一つの物を作り上げるのは大人でも難しい。地域に勇気のようなものを与えてくれた」と後輩の頑張りを評価する。今後も町としてできる支援をしていく考えだ。