スマート社会へ ~地域を創る新しい力~

[東北・新潟8新聞社共同企画]

廃棄物選別ロボ(新潟県上越市)
労働力不足解消へ AIが瞬時に状態判断

(2020年10月11日 付)

ペットボトルの状態を判別するウラノスのAI。ラベルの有無や汚れの程度を自動で見分ける=9月4日、新潟県上越市柿崎区

ペットボトルの状態を判別するウラノスのAI。ラベルの有無や汚れの程度を自動で見分ける=9月4日、新潟県上越市柿崎区

AI搭載の廃棄物選別ロボット「ウラノス」と、開発したウエノテックスの上野社長=9月8日、新潟県上越市柿崎区

AI搭載の廃棄物選別ロボット「ウラノス」と、開発したウエノテックスの上野社長=9月8日、新潟県上越市柿崎区

地図:新潟県上越市


 新潟県上越市柿崎区に本社を置く産業機器メーカーの「ウエノテックス」はAI(人工知能)搭載の廃棄物選別ロボット「URANOS(ウラノス)」を開発した。製品を生み出す「動脈産業」に対し、廃棄物を処理する「静脈産業」は機械による自動化が進まず、現場の労働力不足が大きな課題だ。最新技術の力で業界の未来を変えようとしている。 

 一九三七(昭和十二)年に「上野鐵工所」として創業し、産業用クレーンや省力化設備製造を手掛けてきた。廃棄物の「破砕機」にも参入し、環境関連機器を主力とするが、近年はAIやIoT(モノのインターネット)の活用に力を入れる。その代表的な存在が昨年に販売を始めたウラノスだ。

 コンベヤーを流れるペットボトルや瓶など廃棄物をカメラなどさまざまなセンサーで捉え、AIがラベルの有無や色などの状態を瞬時に判別する。機敏に動くロボットアームがピックアップし、最適な処理ラインに振り分ける。

 従来より大幅に少ない人員でラインを動かせ、作業事故の危険も格段に減らせる。今年三月には熊本市の業者に一号機を納入した。既に別の業者から二、三号の発注も受けている。

 上野光陽社長(48)が開発の構想を抱いたのは六年ほど前。きつい、汚い、危険、臭い、暗いの「5K」。そんなイメージも持たれがちな廃棄物処理業者は、どこも人手確保に苦労していた。「社会に欠かせない『静脈産業』の現場を技術で変えたいと思った」と動機を語る。

 知見がなかったAI開発に特化したグループ会社「リタテクノロジー」(東京)を二〇一八(平成三十)年に設立。社名には、技術で他者に貢献するとの決意から「利他」の意味を込めた。

 廃棄物は規格が統一された部品などと違い、つぶれたり汚れたり状態は千差万別だ。AI選別では大きな障害となるが、ウラノスは大量のデータを基に自ら学びを繰り返し、共通点や特徴を見いだすディープラーニング(深層学習)という手法でこれをクリアした。

 AI開発を担ったリタ社チーフデータサイエンティストの名取則行さん(31)は「機械は疑うことを知らない。正しい認識のためには子どもに教材を与え、教えるように、人が間違いのないデータを準備することが何より大事だ」と語る。学習を深めることで初めて扱う廃棄物でもAIが自分で判断し、選別ができるようになる。

 今後は建築廃材など、より形状や素材がバラバラな廃棄物にも対応するのが目標だ。上野社長は「まだまだやるべきことは多い。お客さんが何に困り、どうすれば課題の解決につながるのか。現場の声を大切に、挑戦を繰り返したい」と力を込めた。

【取材 新潟日報社】


期待のメッセージ

省力化の効果を実感
石坂グループ環境事業部長 石坂繁典さん

 熊本市の廃棄物回収リサイクル会社「石坂グループ」環境事業部長の石坂繁典さん(35)は「四、五人の作業が一、二人でできるようになった」と省力化効果を語る。同社はウラノスの最初のユーザーとなりペットボトル選別ラインに導入した。

 現場環境の改善に向け自動選別機の導入を考え始めていた頃、以前から付き合いがあった上野社長のウラノス開発構想を聞いた。

 海外製品にはメンテナンスや運用コストで不安があり、国産の機械で「静脈産業」の未来を変えたいという上野社長のチャレンジに賛同。現場視点の助言で開発を支えてきた。

 導入後、「差し込む光の加減など、ちょっとした条件で選別の精度が変わる。環境づくりが大事」と課題も見えたが、それ以上に「経験や勘に頼っていたことを補っていける」と期待を寄せる。

 ゆくゆくは他のラインにも導入するつもりだ。「ウラノスにできることは多い。同業者にも広めていきたい」と普及の夢も抱く。


付加価値高めた好例
新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センター参事 大野 宏さん

 長岡市の新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センターの参事、大野宏さん(58)は「新たな看板製品を作り、業界を変えていくという上野社長の熱意を感じた」と振り返る。同センターは、二〇一六(平成二十八)年度から二年間、AI(人工知能)の土台づくりでウエノテックスと共同研究に取り組んだ。

 「共同研究は企業に成果をスムーズに戻せるかが課題だが、専門性を持つ人材をしっかり確保し、グループ会社への技術移転がうまくいった。短期間で製品化した執念もすごい」。大野さんは称賛する。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、新たな商機を見いだそうとAIを使った製品開発を模索する企業が増えている。大野さんはウエノテックスの事業展開について、「ハードの高い技術にAIを上乗せし、付加価値の高い製品を生み出した好事例だ。AIは幅広く応用できる。多くの県内企業に続いてほしい」と話した。


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